海水魚介類の種苗生産現場において、歩留まり向上のボトルネックは魚そのものではなく、初期餌料であるワムシの安定確保にあるケースが大半です。そして高密度で安定したワムシ培養の鍵を握るのが信頼性の高い餌料です。Super Fresh Chlorella V12 (SV12) はこの課題に応える生体液状クロレラ濃縮液であり、日本国内で生産され、厳格なコールドチェーン輸送によって各国の孵化場へ空輸されています。
本記事では、クロレラの基礎知識、福岡県筑後工場での生産工程、栄養成分仕様、そして推奨給餌プロトコルを網羅して解説します。
クロレラとはどのような生物か
クロレラは球形に近い単細胞の緑藻(微細藻類)であり、大きさはわずか数マイクロメートルと赤血球と同等です。1890年にオランダの微生物学者M.W.ベイエリンクによって発見され、現在では約20種が同定されており、形状や栄養組成の異なる多数の株が存在します。
飼料生物としてのクロレラには2つの際立った特長があります:
- 極めて高い増殖速度。 光合成条件下において、一般的な細胞が2分裂を行う間に、クロレラは約20時間で4分裂を完了します。他の餌料生物にはない高頻度での収穫が可能です。
- 種苗生産における食物連鎖の基盤。 ワムシがクロレラを捕食し、仔稚魚がそのワムシを捕食します。マダイ、ヒラメ、トラフグ、クロマグロなど約70種におよぶ養殖魚種がクロレラ給餌ワムシによって育成されています。
日本・筑後で培養、新鮮なまま出荷
SV12は、クロレラ生産のパイオニアであるクロレラ工業株式会社により、福岡県筑後工場の専用施設で生産されています。培養プールは直径最大40メートル、水深わずか10〜15センチメートルの開放型構造となっており、すべての細胞に太陽光が均等に行き渡るよう設計されています。

SV12が乾燥・冷凍藻類製品と決定的に異なるのは、収穫後の加工を一切行わない点です。濃縮液は乾燥も凍結もされず、冷蔵状態のまま保冷剤とともに断熱容器に梱包され、航空便で直送されるため、生きた細胞のまま孵化場に届きます。
SV12の主要成分仕様
SV12の公認規格における主要パラメータ:
| 項目 | 規格値 |
|---|---|
| 生細胞密度 | 約130億細胞/ml |
| 細胞サイズ | 3–6 µm |
| 乾燥純重量 | > 135 g/l |
| ビタミンB12 | > 320 µg/l |
| DHA | 総脂肪酸の17±2% |
| EPA | 総脂肪酸の > 2% |
海水仔稚魚の必須脂肪酸であるDHAとEPAを含有しているため、SV12で培養したワムシはそのまま仔稚魚へ給餌可能です。従来の二次栄養強化工程を省略でき、含有されるビタミンB12がワムシの安定した増殖を維持します。
乾燥純重量100gあたり粗タンパク質約54.8%、粗脂肪13.2%、炭水化物24.3%を含み、豊富なアミノ酸およびミネラル群(カルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム、リン)を含有しています。詳細は製品ページ記載の仕様書をご確認ください。
給餌プロトコル:200個体から1,200個体/mlへ
SV12は高密度および低密度培養の双方に適した高濃度懸濁液です。メーカー推奨の基本培養計画は以下の通りです:
| 日数 | ワムシ密度(個体/ml) | SV12添加量(ワムシ100万個体あたり) | 給餌頻度 |
|---|---|---|---|
| 開始時 | 200以上 | 5 ml(水槽飽和) | 初回投入 |
| 1日目 | 300 | 2.5 ml | 1日4〜6回 |
| 2日目 | 600 | 3–4 ml | 1日4〜6回 |
| 3日目 | 1,200 | > 4 ml | 1日4〜6回 |
維持すべき培養環境条件:
- 溶存酸素飽和度 90%以上
- 水温 25〜28 ℃
- 間引き収穫 4日目以降、培養液の50%
この管理により、3日間で約6倍の増殖が得られ、実証試験では最大8倍の増殖が確認されています。詳細は生クロレラによるワムシ生産効率向上レポートをご参照ください。
ワムシへの栄養強化効果
SV12で培養されたワムシの脂質組成は、乾燥重量比で総脂質12.7%、総脂肪酸中に占める割合としてEPA 4.1%、DPA 5.8%、DHA 10.5%を示します。一般的な酵母培養では得られない高度不飽和脂肪酸が仔稚魚の初期開口時に直接供給されます。
保管および取扱い方法
SV12は生体原料のため、以下の取扱規定を厳守してください:
- 2〜6℃で冷蔵保管し、直射日光を避ける
- 凍結厳禁(凍結により細胞が死滅します)
- 製造日から30日以内に使用する
- 保管中は定期的に容器を反転させ、使用前には軽く振って細胞を均一に分散させる
SV12の供給について
筑後工場からお客様の受取場所まで一貫したコールドチェーンでお届けします。なお、乾燥粉末を用いたグリーンウォーター調整にはEmerald Chlorella パウダーもご利用いただけますが、集約的なワムシ培養には生体細胞が最も効果的です。
お見積りおよびデータシートのご請求はSV12製品ページよりお申し込みいただくか、専任スタッフまでご相談ください。



